研究・論文

【紙上バトル実況➃】白熱!CSV vs CSRは空前絶後の殴り合いに突入【ポーター vs クレーン】

2020年5月18日

前回は、CSR研究で有名なアンドリュー・クレーンのCSV批判をご紹介しました。

今回は、クレーンの批判に対するポーターの反論と、その反論に対するクレーンの反論をご紹介します。両者、全く引く気がありません。空前絶後の殴り合いをお楽しみください笑。

論文紹介:A response to Andrew Crane et al.’s article by Michael E. Porter and Mark R. Kramer

ポーターからの反論には、大きく以下の3点が述べられていました。「どこがパクリやねん!」「論点違うことにイチャモンつけられても困ります。」「ビジネスの現場知らなすぎやで…」。

どこがパクリやねん!

クレーンは、ビジネスを通した社会問題の解決を提起する概念は、他にも無数に存在するため、CSVに新規性がないことを指摘しました。 これに対してポーターは、以下の3点から反論しています。

①他の多くの概念は、地球環境や地域社会にとっての価値と、企業にとっての価値とのバランスを取ったり、それらの融合を試みるもの。あるいは、社会問題を解決するために、ビジネスを活用するものであると指摘があります。そして、CSVは企業がお金を儲けるために、社会問題の解決に取り組む上での具体的方法論を述べたものであると強調されています。

②その方法論は、ポーターがこれまでの研究の中で提唱してきた戦略論のフレームワークに即したものであり、そこに独自性があると主張します。具体的には、ポジショニング理論、バリューチェーン、ダイヤモンドモデルというフレームワークに即した3つの方法論が述べられています。これらの解説には文章を要するのと、今回のバトルとはズレますので、後日記事にします。

➂また、実際沢山の企業がCSVに取り組み始めているんだから、これは俺の理論に新規・独自性があった何よりの証拠じゃろがい!といったオラつき気味の跳び膝蹴りも披露してくれています笑

論点違うことにイチャモンつけられても困ります。

クレーンは、CSVで法律や倫理基準といったルールを守ることは「満たされている前提」と位置付けられていることに憤慨し、企業がルールを守ること/企業にルールを守らせることの難しさを説いたのでした。

これに対してポーターは、以下ように反論します。 満たされている前提と位置付けたのは、ルール順守の難しさを理解していないわけではありません。CSVは、あくまで企業がお金を儲けるための方法論を論じたものなので、ルール順守といった次元が違う論点はこの論文の範囲外であると言いたくて、満たされている前提と位置付けました。

先ほどとは一転して、うまく受け流そうとするような筆致ですね。

ビジネスの現場知らなすぎやで…

CSVの本質は、企業が儲けるために「事業と関連が弱い社会問題を無視する/事業と関連が強い社会問題だけに取り組むこと」です。これに対して、クレーンはあらゆる企業がそうしたスタンスで地域社会と向き合ってしまうと、対応できる社会問題に偏りが出たりして、社会全体が歪んでしまうと警鐘を鳴らしたのでした。

ポーターはこれを、利益にシビアなビジネスの現場を何も知らない人間の戯言であると、切って落とします。自社の事業と関連が強い社会問題にだけ取り組むという現場に受け入られやすいコンセプトが、せっかくビジネスと社会問題の溝を埋め始めているのに、土台実現不可能な理想論を振りかざして水を差すのはやめてほしいといった反論です。

例えるなら、がっぷり四つの組み合いといった感じでしょうか。お互い相手の学問的立場など全く無視していがみ合っています笑。

論文紹介:Andrew Crane, Guido Palazzo, Laura J. Spence, and Dirk Matten reply.

つづきまして、ポーターの反論に対するクレーンの反論です。こいつらいつまで続けんねん…と呆れている方もいらっしゃるかもしれませんが、本紙上バトルはこれで最後になりますのでご安心ください笑

クレーンはポーターの反論に対して、以下の4点からまたもや反論を仕掛けます。「絶 対 に パ ク リ で す」「ルール順守の方法論もしっかり考えましょう」「理想論を振りかざしてるのは貴方の方ではないですか」「根拠のない傲慢な物言いは慎んでください」。

絶 対 に パ ク リ で す

新規性に関する議論は完全に平行線です笑。お互い譲歩をしません。クレーンはポーターの反論をサラッと流して、「で?結局、ソーシャルイノベーション、戦略的CSR、ステークホルダー理論との違いは何なの?」と、小難しい理論を並び立て、それら類似概念との差異を明確にしない限り、新規性は認めない徹底抗戦の構えを改めて示します。

ルール順守の方法論もしっかり考えましょう

ここでのクレーンは終始ご満悦です。勝ち誇った風を吹かし続けます笑。まず、ルール順守がCSVの基礎にあることが明確に示されて、僕は嬉しいですと始まります。そして、基礎にある重要な事柄を満たされている前提として流してしまったポーターの怠慢に対する説教がくどくど続きます笑。

最後にはルール順守の方法論をちゃんと考えて来れたら、CSVの発展を手伝ってあげましょうといった、恐ろしく上から目線の発言でたたみかけます。よもや、論文を読んで笑ってしまう日が来るとは思いませんでした!

理想論を振りかざしてるのは貴方の方ではないですか

ポーターは企業がお金儲けを超越して、より良い地域社会との関わりを模索することの非現実性を指摘しました。クレーンは逆に、ビジネスと社会貢献を両立できると思っている方がよっぽど非現実的であると言い返す構図です。お互いが、相手の理論におけるトレードオフ(相容れない状況)をつつきあっていますね笑

根拠のない傲慢な物言いは慎んでください

クレーンはまず、ポーターがCSVは多くの企業行動に変化をもたらしましたと言っている部分を切り取り、根拠がない傲慢な主張だとあざ笑います。そして、そもそもCSVは類似概念との差異が明確じゃないんだけどね!!と、前の反論を蒸し返します笑。

最後には、利益を追求するのでなく、関わる対象のみんなが互いを尊重し合ってビジネスを運営することができている例を紹介します。熱帯雨林を伐採せずにパームオイル(食品やコスメなど多くの原料に採用されるオイル)を調達するための仕組み(RSPOと言います)を挙げて締めくくられています。

最後の方は本当にただの喧嘩でしたね笑。これにてポーターとクレーンのCSV vs CSR論争は終わりですが、議論を散らかしたまま終わらせるのもスッキリしませんので、次回は独断と偏見で争点を整理し、この紙上バトルの勝敗を判定したいと思います!

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参考文献

Crane, A., Palazzo, G., Spence, L. J., & Matten, D.(2014)" Andrew Crane, Guido Palazzo, Laura J. Spence, and Dirk Matten reply." California management review, 56(2), pp.148-153.

Porter, M. E., & Kramer, M. R. (2014). A response to Andrew Crane et al.’s article. California Management Review, 56(2), 149-151.

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